The Chicago Spectacular Night 2 評価:C
 2006年12月9日、イリノイ州シカゴで開催された2日連続興行の第2日目となります。メインの8人タッグのカオスぶりが目を引きますが、ジョーvsマーク、リチャーズvsジェイ、そしてタッグ王座戦ではないものの羊&ストロングvsダニエルズ&クロスには期待したいところ。


エース・スティール vs タンク・トーランド
 グダグダのグラウンドからスタートして、予定調和な展開に終始した試合。まさしくboringチャントが相応しいかと。


【6メン・メイヘムマッチ】
菊タロー vs ジェイク・クリスト vs デイヴ・クリスト
vs CJオーティス vs ペリー・プリモウ vs トリック・デイビス
 菊タローコールが起きててワロタ。ROHファンはどんなけマニアなんだ……。本日の菊タローはキックを放つ時に太股を叩くタイミングをわざとズラすという、これまた分かりにくいマニアックなネタを披露。そしていつもの飛ぶフリも披露するものの、飛んでないのにHolyShitチャントが出たのにはかなり吹きましたね。後はフレアーとホーガンネタを披露して一先ず仕事終了。若手の戦いに軸が移ります。
 若手の方はスピード感と派手さ優先気味のありがちな試合なものの、前座なんで大目に見れますね。個人的にはアイリッシュ・エアボーンの2人(クリスト兄弟)が中々良い感じでした。


ホミサイド vs シェイン・ハーガドン
 スカッシュマッチ。短すぎてそれ以上コメントしようがありません。


サモア・ジョー vs マーク・ブリスコ
 やはりこのカードだとジョーが一方的に攻める展開になりますね。マークもそれなりに反撃して盛り上がるのですが、あっさり決着してしまいます。まぁまぁ悪くない試合だったと思いますが、この2人の過去の対戦を見る限りではもっと出来るでしょうね。


オースティン・エリーズ&ロデリック・ストロング
vs クリストファー・ダニエルズ&マット・クロス
 マット・サイダルが負傷したため、マット・クロスを入れてのノンタイトル戦に。でもこれだけ役者が揃ってるのならちょっと楽しみですね。
 ダニエルズvsストロング→エリーズの順に展開して試合はスタート。最初の攻防から魅せて来ますね〜。しかしやはりこの中ではクロスが格下のため必然的にクロスが捕まる展開に。徹底的に虐められた後、何とか脱出したクロスがダニエルズにタッチするとお約束通りダニエルズが爆発。更にダニエルズのケブラーダ→羊のトペ→クロスの場外へのシューティングスタープレスと素晴らしいキレの飛び技が入り混じり、観客も非常に盛り上がりました。
 その後は打投飛と各人大暴れ。クロスも見せ場をもらい、全員が持ち味を存分に発揮しました。皆、今日は技のキレが良かったですね。王座戦でも通用するクオリティの試合でした。


【スティールケージマッチ】
ホミサイド vs アダム・ピアース
 凶器でぶん殴って、投げ飛ばしてと予想通りすぎる試合で、凡戦以外の何物でもないという感じ。ただホミサイドが頑張ったお陰で、この対戦カードとしてはかなりマシな部類に入ってるんじゃないかと思います。


デイビー・リチャーズ vs ジェイ・ブリスコ
 カードを見た時点ではセミファイナルにしては弱いかなと思っていましたが、しっかり勤め上げています。両者とも動きのキレが良くていいですね。両者とも大技を打ち合う展開には少々疑問も感じなくはないですが、熱くて面白いことには変わりません。ムーブ的にはデイビーが垂直落下式魔人風車DDTやってたのが印象に残りました。


【8メン・イリミネーション・マッチ】
ブライアン・ダニエルソン&ジミー・ジェイコブス&ジミー・レイヴ&SHINGO
vs デリリアス&BJウィットマー&コルト・カバナ&ナイジェル・マッギネス
 何とも無茶苦茶なメンバーによるイリミネーション8人タッグ。
 試合は序盤から反則攻撃が飛び交う荒れ模様で、中盤からは関節技と打撃と丸めこみが中心の渋〜い展開が続きます。正直BJ退場〜マッギネス退場までは退屈に感じてしまいました。大人数タッグで関節技中心でロンリーバトルされると、残りの選手がエプロンでずっと棒立ちになってしまい、ちょっと間抜けな光景に見えてしまうんですよね。しかも交代のチャンスが来たら、総出で飛び出してきた相手チームに行儀よくエプロンから叩き落とされてしまいますし。このワンパターンぶりは何とかならないものか。
 ただラスト3人になったあたりからの攻防は流石に良かったですね。残った面子が面子だけにここでもあまり投げ技は出ないものの、始めてデリリアスをカッコよく感じました。この頃はデリリアスはSOTFを制覇してプッシュされてましたからね。今は恋愛アングル絡みでトップ戦線から遠ざかってますが、また出てきて欲しいです。


 比較的濃い試合が多いのですが、そもそものマッチメイクが今一つすぎて普通程度の興行にしかならないという……。まぁ他所の団体でこんな無茶なマッチメイクやったらもっとガタガタになるだろうだけに、いかにROHのレスラーの地力が優れているか伺えるってもんですが、やはりこの面子でこのマッチメイクでは寂しいです。

(執筆日:2008年9月23日)


International Challenge 評価:C
 2006年12月22日、コネチカット州ハートフォードで開催された興行です。次の日にFINAL BATTLEを控えていますが、KOWvsブリスコ兄弟、ロデリックvsデイビー等の面白そうなカードが並びます。またメインはダニエルズ&サイダルvsCIMA&SHINGO(鷹木信悟)という今では実現不可能な対戦カードなので希少価値がありますね。勿論試合内容は言うに及ばず相当期待できますし、楽しみで仕方ありませんよ。


ペリー・プリモウ vs ジェイソン・ブレイド
 なんか全体的にドラゲを意識した感のある飛び技多めルチャっぽい試合。ただ息合わせてるのがバレバレで、技だけしかないのは頂けない。


オースティン・エリーズ vs エディ・エドワーズ
 ROHに上陸したばかりのエドワーズが大ベテランの羊に挑戦という構図です。自分の中ではエドワーズのイメージは中々良く、良い試合を繰り広げてほしいところです。
 さて試合の方なんですが両者とも活き活きとしてはいるものの、緩急が足りず今一つ散漫になってしまった印象を受けてしまいました。単発の技は良いんですけどねぇ……。エリーズが珍しくラ・ブファドーラを出してたのが印象に残りました。


アダム・ピアースwithシェイン・ハーガドン vs デリリアス
 何とも噛み合わなさそうなカードですが一体どうなることやら。
 典型的ヒールレスラーとしてのムーブに終始していたピアースですが、しょっぱさは隠せませんでしたね。また元々地味なスタイルであることもあって、デリリアスが派手な技を連発して華を生み出そうとしていて凄い違和感を感じました。


ジミー・ジェイコブス&メルセデス・マルチネス vs BJウィットマー&デイジー・ヘイズ
 男女ミックスドマッチですね。気楽に見ましょう。
 男連中が場外戦を繰り広げ、女連中はリング内で普通に試合しているというおかしな構図から始まったこの試合。いや女の子らも場外ダイブやったりして頑張ってたんですが、やはりというか場外戦の方が目立っていて可哀想でしたね。後半はリング内で4人が入り乱れて、合体筋肉バスターとか2人まとめてエクスプロイダーとかなかなか派手にやってました。試合時間自体が短いので、本当に繋ぎの試合といった感があります。


コルト・カバーナ vs ブレント・オルブライト
 先の試合終了後の乱闘からベビーのカバーナが救出にやってきてそのまま試合開始になる訳ですが、カバーナがいつも通りコミカルなムーブを連発してしまったせいで物凄く緩い雰囲気になってしまいました。2008年に評価を上げたらしいオルブライトもこの時点ではガタイと無骨な雰囲気だけと言った感があり、しょっぱさだけが印象に残ります。
 ムーブ的にはカバーナが珍しくラ・ブファドーラやってたぐらいですかね。ただ個人的にはオルブライトがいつも使ってる技らしい「61ニー」を初めて見て爆笑してしまいました。日本のレビューサイトとかで見ててっきり誤字が何かかと思ってたもんで……。本当に「61ニー」だったのね。ありゃ動きが不自然すぎますよ。(笑)


キング・オブ・レスリング vs ブリスコ・ブラザーズ
 KOWとブリスコ兄弟が激突。しっかし身長差凄いですね……。ここまであるとは思わなかった。ブリスコ兄弟がその差を超えられるかどうかにも注目です。
 かなり体格差があると試合も噛み合いにくい印象がありますが、どちらもムーブミスを起こさずリズミカルに技を繋げて観客を盛り上げていました。特にKOWは初めて見たんですが、トリッキーな連携技の数々を見るにつれてプロレスの奥深さを考えさせられましたね。この組み合わせだとマークぐらいしか飛ばなさそうな印象を受けますが、結構皆ぽんぽん飛んでたのには笑いましたけど。
 全体的にビッグマッチ前の前哨戦という色合いが強く、手抜き感はありながらも最低限は楽しませるといった塩梅で、個人的には非常に物足りませんでした。最後のオチも酷いですしね。残念。


【4コーナーサバイバルマッチ】
ホミサイドwithジュリアス・スモークス vs ジミー・レイヴ
vs ブライアン・ダニエルソン vs ナイジェル・マッギネス
 ホミサイドvsダニエルソン、レイヴvsマッギネスという構図が見えてくる4コーナーサバイバルマッチ。
 ホミサイドとマッギネスで試合開始したんですが、何とホミサイドがグラウンドに付き合ってるんですよ。珍しいですね〜。それと前述した通り2組の抗争に分かれてるので、試合が進むにつれて自然とタッグマッチになってしまい、4コーナーサバイバルマッチの意味が無いような気がしました。
 ムーブ的にはマッギネスがコーナー倒立→ホミサイドが相手をマッギネスへハンマースロー→マッギネスがキックという連携には笑いましたねー。それとマッギネスがジョーブレイカーラリアットをしようとロープの間を潜って逆さになってるところで、ダニエルソンが押さえつけてしまい逆さの状態でバタバタしてたのもシュールすぎて吹きました。
 あと先の試合と同じくビッグマッチ前の前哨戦という色合いが強く、そこそこ面白いんだけど物足りなさは残りました。オチが酷いところまで前の試合と同じなのはちょっとねぇ……。


【FIPヘビー級王座戦】
ロデリック・ストロング vs デイビー・リチャーズ
 このカードを見ると、長い間ROHとFIPの2団体を股にかけて抗争をやっていた印象が強いですね。デイビーの方は実はあんまり良く知らないんで、長く抗争が組まれ続けるほどのカードなのか確かめてみたいと思います。
 試合はグラウンドの展開からスタート。2人とも若いですが中々良いグラウンドを見せてくれますね。軽快な動きが心地よいです。しばらくグラウンドを続けた後、普通に投げ技等も混ざってくるのですが、意外とデイビーが飛んでたのが印象的でした。後、中盤ではわざわざトップロープを飛び越える形で 断崖式スイングDDT なんて無茶苦茶なムーブを見せたのには吹きましたね。終盤の攻防も中々良かったです。
 ただ問題もあって、両者とも今一つ感情が見えないというか妙に淡々としているので、動きは全然良かったんですが乗り切れず、盛り上がりも今一つだったのが残念でした。その上、ラストのオチも酷過ぎてなんだかなぁという感じです。


【ROHタッグ王座戦】
クリストファー・ダニエルズ&マット・サイダル vs CIMA&SHINGO(鷹木 信悟)
 現TNAのダニエルズと現WWEのサイダルという王者コンビに、ドラゴンゲートの新旧エースタッグが挑むという非常に貴重な対戦カードですね。CIMAが入場の際にROHのロゴが入ったニットキャップを被っていたり、ダニエルズのスキンヘッドを触って挑発したりした辺りに、「異文化同士の交流と激突」という側面が表われているんじゃないでしょうか?特にCIMAがまさかダニエルズを弄るとは思わなかったので驚きましたね。ROHのレスラーってスキンヘッド多いので、スキンヘッド弄りをしてるとこ見た事ないですし。
 さて試合は鷹木vsダニエルズのグラウンドからスタート。お互いの感触を確かめるようなオーソドックスなやりとりから、すぐに交代していくんですが、どうもサイダルが過剰にルチャを意識したのか、今一つ華やかで当たりの弱いムーブが続きます。またCIMAもダニエルズ&サイダルの両者共にテンポが噛み合ってないように見られ、盛り上げに欠けたまま中盤へ移ります。
 CIMAと鷹木は当時Blood Generationというユニットで一緒でして、その中でスーパードロル等の定番連携技があったんですが、中盤になってそれらが出た時は盛り上がるものの、個人個人のムーブで盛り上げることができないのはやはり致命的です。CIMAを突き飛ばして鷹木にフロントネックロックの形で抱えさせてそのまま鷹木ごとSTO(CIMAは首捕まってるのでDDTがかかる)っていう、ダニエルズのダブル攻撃は非常にユニークで面白かったんですけどね……。
 連携技が入り乱れた後は、場外への飛び技祭り。流石にこれは盛り上がったものの根本的な相性の問題は解決されていません。ここに至っても王者組とドラゲ組の手の合わなさを修正することはできていません。またどうやらリング自体の大きさ等が違っているようで、ドラゲ組はロープワークまでぎこちなくなっている場面が少々見かけられました。サイダルも雪崩式フランケンシュタイナーを見せて盛り上げようとしますが、すっぽ抜けてしまうという痛恨のミス。受け手の鷹木が素早く逆エビ固めに押さえてCIMAが低空ドロップキックで攻撃してフォローしてたのは流石でしたが。
 終盤ではお互いフィニッシュムーブを含めた大技を連発して非常に盛り上げましたが、実は切り返しもほとんどなく、本当に単発の技をハイスピードで繋げているだけというのは寂しいですね。CIMAがスワンダイブしようとトップロープに飛び乗った所をダニエルズが両肩に抱え上げてデスバレーボムしたのは良かったんですけれども。ラストについては本当に「まぁまぁな攻防を経てあっさりフィニッシュ」という印象を受けました。
 試合全体を通して異文化交流の悪い面が浮き彫りになってしまったという感があります。普段やってない相手とやって両者とも良い面だけを出すのは難しいんだなぁと考えさせられる内容でしたね。会場は非常に盛り上がってるんでケチをつけることに対して気が咎めるんですけど、やはり気になってしまったもので……。


 KoWvsブリスコ兄弟、4コーナーサバイバル、FIP王座戦がスカされたのがあまりにも痛いですね。概ね悪くない内容だっただけにどれもこれもオチがひどすぎる!そして期待のメインも悪くはないと思うんですが、全員のポテンシャルを考えると半分ぐらいしか出し切ってない感があり、自分としては満足できませんでした。まぁそれでもCランク取れてしまう辺りがROHの底力を証明してるとも言えますけど。

(執筆日:2009年1月25日)




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